菫桜色

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小説『46番目の密室』 感想

 

新装版 46番目の密室 (講談社文庫)

新装版 46番目の密室 (講談社文庫)

 

 

火村&アリスシリーズ第一弾。なんかキャラが定まってない感というか、国名シリーズとではなんかキャラが違って見えます。特に火村。
そしてなんだか…火村とアリスの距離が近い。仲が良い。
嫌な感じで例えると、46では付き合い始めのカップルみたいにとりあえずとにかく仲良くて、国名シリーズでは夫婦みたいな落ち着いた関係になってます。時系列的には合ってるけど。
「それは悪かった。謝るよ。――けど惜しいことをしたな。君の人となりの紹介はこれから先が本論だったんやぞ。火村英生は一見紳士風ではなく、性格は屈折している。友人は俺ぐらいしかいない。しかしその才能はというと犯罪学者という枠には収まりきらない逸材であり、法律学、法医学から心理学まで造詣が深く、語学も堪能、文学、音楽、美術、映画、歴史、天体観測、オカルティズム、ケルト神話、変態性欲、ボクシング、登山、ボトルシップ作り、猫の飼い方に一家言を持つというところまでしゃべるつもりやったのに」
ええっと、長かったですがとにもかくにも何が言いたかったのかというと、『変態性欲』ですね。どっから出てきたんだこの単語は。
というかオカルティズムとケルト神話については是非私もご講義願いたいですね。あと法医学も。


「ちぇっ、そんな犬死には嫌だな」
ってあんた、ちぇっとか言うのかよ火村先生。笑えるなあ。
「デリケートにできてるんやな」
「ああ。デリケート過ぎて生きにくいぐらいだな」
そんなわけあるか!ひとり話もよう聞かんとメロンしゃくしゃく食うてた奴の言うことと違うわ。


そして第一弾だからか長編だからか、人物についての説明がちょっと丁寧。火村とアリスの出会いのシーンが書かれていますよ。
しかし出会いの五月七日という日をしっかり覚えてる辺りがいじらしいよねアリス。
何があぶそるーとりーや!かっこええな!
『かけてくれた言葉は「やったな」のひと言だけだったが、それが心からの祝福だと私ははっきり感じた。だから私も彼の言葉にだけは心から「ありがとう」と礼を言った。』
仲良いなあ。


というか白いクマのぬいぐるみの背中をざくざく開けてる火村がかっこよかったですね。
正確には「貸せ」とか言ってアリスの手からぬいぐるみひったくるあたりだけど。


「――男女の気持ちの機微に精通した俺のこの見方、どうだ?」
男女の気持ちの機微に精通してたら三十二で独身なわけが…あるか…。笑
でも殴られたアリスの心配はちゃんとしてます。大丈夫、と言ったら、ならいい。と。
「アリスと一緒でもかまいませんか?」
「有栖川さんはあなたの保護者なんですか?」
ってなんだこれはっていうかちゃんと否定をしろよ火村。保護者ではないだろう。


「セロテープ、セロテープ」
って、歌ってる場合か火村さん。なんでこうこの本つっこみどころ多いんだろう。
『「ああ、判ってる。声を揃えて言おうか?」
私たちはそうした。』
するんか。三十路男が二人でなにやってるんだ。
しかも一回じゃなかった。
お次はアリスが屋根から落ちかけたシーン。
『「おい、危ないことやってるじゃないか。大丈夫か?」
破風に跨ってひと息つく私の傍らにやってくると、火村は呆れ顔で言った。
「大丈夫。俺は日本のブルース・ウィリスやから」
「やってらんねぇよ」
彼は雪をひとすくいして、私の頭から掛けた。
「びっくりさせて悪かった」
「反省のポーズだけなら猿でもするぜ」
彼はさらに口の悪いことを言ったが、よほど驚いたらしく、胸に手を置いて呼吸を整えていた。許せ。』
ちゃんと心配してるじゃん。
そのあと。「お前はじっとしてろ」とか言ってアリスを労わってんだか何なんだか。アリスはアリスでいい子にしてようとかしてるしね。


「アリス、どこへ行ってたんだ?」
そ、束縛…。
『「話したいことがある」
他人のもののような声で私は言った。
「いいタイミングできたようだな」
彼は凍った池の方を向き、私の目を見ようとはしなかった。
「お前はいつもそうや」
「そうでもない。お前が伸びている時にはぐうぐう眠ってたじゃないか」』
…根に持ってるの、先生。


「――アリス。お前は小説を書いてろ。間違っても消防士にはなるな」
何なんだかね。
なんだかよくわからんけどいやに仲いいよね。
アリスは、何か起こればああ火村に言わな!みたいなんなるし。
火村は火村でアリスアリスって。
何なんだこの仲良し具合。何なんだ。
そんな本でした。
…まずい、本質には全然触れてないぞ。

 

 

 

46番目の密室

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