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菫桜色

観た映画、読んだ小説、プレイしたゲーム、良いこともそうじゃないこともいろいろ

小説『モロッコ水晶の謎』 感想

小説:あ行 有栖川有栖

 

モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)

モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)

 

 

久々の有栖川と火村の楽しいコンビ。
助教授の身代金』『ABCキラー』『推理合戦』『モロッコ水晶の謎』の4編。

助教授の身代金』
助教授っていうから火村先生かと思ったじゃないですか。まあ、わざとなんでしょうけれど。
身代金の受け渡しって、ドラマでも小説でも何でも上手くいかないようになってますよね。
既に死んでる、金が目的じゃないっていうのがよくある展開な気が。
まあそこは、小説だからでしょう。現実は知りませんが。
「どこかで声と顔を誤って認知したわけだ。どこでズレたか、私には見当がつく。それは例えば、有栖川さんは助手なのか、という宇田川さんの問いに私が『そんなところです』と答えたこと。あるいは、凶器がどこで発見されたのか『有栖川さん、お判りになりますか?』という警部の問いかけの後、私が『多分、こうだ』と応えたこと。またあるいは、私が有栖川に向かって、『さすがは犯罪を飯の種にしている先生』と話しかけたことです。彼はただ作家と紹介されていたから、『犯罪を飯の種にしている推理作家』というふうには結びつかなかったわけだ。この3つだけで誤解が生じる素地が整う。おまけに、あの時の有栖川はなかなか積極的に発言していたので、彼が犯罪学者に思えたのかもしれませんね」
城戸が呆れて「先生は、そんな些細な会話まで記憶しているんですか。よく頭が破裂しないものですね」
と言ったら火村先生、
「1時間前に自分が話したことぐらいははっきり覚えている。あんた、他人がしゃべることばかりに興味を持つから、自分が何をしゃべったか忘れてしまうんだ」
って。
普通一時間前にしゃべったことをそんなに克明には覚えてませんよ。よっぽど印象的でなければ。
しかも火村先生が諳んじているのは一時間前どころじゃありません。アリスに関して、先生はたまに人間離れした力を発揮するときがあるような気がする。
たまに…いや、よく思うけど、ほんとに火村先生ってトンデモ人間だな…。って。

『ABCキラー』
推理小説でシリーズやってたら一度は行き着きそうな気がするABC殺人事件。
そして、『絶叫城殺人事件』以来?…あんまりはっきり言えないけど、リアルタイムの連続殺人事件に火村先生が絡んでます。
アガサ・クリスティの『ABC殺人事件』の模倣っぽい事件。と、作中でアリス嬢が言ってます。
火村先生もばっさばっさ切り倒していっている通り、日本でABC殺人事件はあんまり現実的じゃないかなあ、と。LとかVとかXとかには確かに苦労するだろうな。
だからってもし日本向けにあいうえおにしても…50音は多すぎる。『ん』はないし。そうしたら『あいう殺人事件』?ちょっと間抜けで笑える。『いろは殺人事件』ならまだ様になる??ならないかな。
脱線しました。

とにかくABC殺人事件は非合理的だねってこと。ですかね。
そしてそう、何が書きたいんだかだんだんよくわからなくなってきましたが、バトンタッチ殺人事件でした。

『推理合戦』
アリスの先輩朝井小夜子女史と、我らが火村英生助教授と、遅筆推理小説有栖川有栖
の、焼き鳥ディナー。
まだちょっとの会話しかしてないのに、火村と小夜子が、それまでの会話についてまだ出てきてなかった、本当なら火村も小夜子もお互い知らなかった筈の情報を話し始める。
首を傾げるアリス。
おいてけぼりですね。
なのでわざわざ直接S***まで出向いちゃうアリス。いつも思っているけど結構フットワーク軽い。
そして火村の歩いた道のりをたどってみます。
なんだか謎はどんどん解け…そしてまだ完結してない連載中の朝井の小説の犯人まで言い当てる。
ちょっと閑話っぽくておもしろいですこういうの。

『モロッコ水晶の謎』
とある社長邸のパーティーで殺人事件が発生。
グラスに毒が仕込まれてたらしいが…グラスはゲストがそれぞれランダムに選んだもので、誰の作為も見えない。
っていう感じの話。
明海ちゃんみたいのちょっと好きだな。
そんな記述があったかどうかもう覚えてないし私の勝手な思い込みかもしれないけど、おかっぱで目が鋭くて殆ど表情に変化がなく隙がない感じ。
弘俊は、この話にはほとんど関係のない人間だと思っていました。小説家志望でアリスの周りをちょろちょろするだけの可愛い少年だとか、阿江さん以外にジュース選ぶ人間の頭数的存在、とか適当に思ってた。割と、最後まで。
少なくとも火村とアリスが、
「マジか?」
「マジ」
とか言ってるときにはまだ何も気付いてなかった。
はたしてトリックは…。
ここまできて今更だけど読んでないひとは読んでほしい。
えっ??これが本当?犯人をだましておびき出す嘘じゃなくて??????
って疑っているうちに本当に終わってしまうので…。
まあある意味、予想だにしない展開、です。
でも有栖川ミステリらしくていいと思います。